BtoCにおいて、マス広告などのリアル広告は、企業周知に有用なプロモーションのひとつ。集客や販売促進の広告戦略としてはもちろん、ブランドイメージや信頼性を高めるためにも活用できます。
しかし、ターゲット層へ絞ったアプローチが難しいため、獲得単価は高くなりがち。効果が薄いと感じている人も少なくないでしょう。
英語教育事業を展開するトライオン株式会社。同じくタクシーの交通広告を通じて新規顧客の獲得を図っていたものの、3カ月ほどで伸び悩みを感じるように。そこでWebマーケティングへ切り替えたところ、リアル広告の6分の1ほどのコストで獲得件数を約20倍に伸ばすことができました。
今回はトライオン株式会社の創業者、代表取締役の三木雄信さんに、効率的なWebマーケティングの活用法や、リアル広告とWeb広告の上手な使い分けについて伺いました。
リアル広告で直面した集客への壁
トライオン株式会社は、ビジネスや転職のために本気で英語を身に着けたいと思っている人に向け、1年で英語をマスターできるプログラム「TORAIZ(トライズ)」を提供しています。 TORAIZ(トライズ) http://toraiz.jp/ 三木さんは、三菱地所やソフトバンクにて、10年間ビジネス界の第一戦でプロジェクトマネージャーとして活躍。そこで得たノウハウや経験を活かして人や企業を助ける仕事がしたいと、2006年に同社を立ち上げました。三木さん:英語の学習は3カ月ほどで挫折してしまう人が多いんです。そのため、目標設定や数値化による上達の実感、マンツーマンのコーチングで専任コンサルタントとともにスランプを乗り越えるなど、語学学習をプロジェクトとして英語学習を支援しています。 モチベーションを維持するために、人工知能を用いたスピーキングテストを毎月おこなうなど、学力の進捗を数値化する工夫も取り入れています。成功の裏側には、ゴール思考や数値化、高速PDCAなど、ソフトバンク流のマネジメント術が随所に活かされているといいます。ターゲットは仕事で英語を必要としているビジネスマン。定期的に教室に通う必要があるため、当初は店舗周辺を走るタクシーの交通広告を利用して集客を図っていました。ところが、3カ月ほど経つと一定以上の成果が見込めなくなっていったとのこと。 その理由について、「掲載エリアのタクシー利用者で弊社に興味を持ってくれた方のアクションがひと段落した」と三木さん。掲載エリアの拡大を計れば新たな層へアプローチができますが、さらに予算も必要になります。 また、当時は教室が1店舗しかなかったため、掲載エリアを広げても集客につながる効果は薄く、リアル広告の集客に限界を感じるように。 そこで、普段タクシーを利用しない層へもアプローチできるよう、Web広告を主とする戦略へ切り替えました。 その結果、新規の申し込み数を取り戻すことに成功。更に、Webでは広告にかかるコストも抑えられたため、獲得単価はリアルな広告の6分の1まで下がりました。
獲得単価を意識したWeb広告の運用で、コスト減獲得増を実現
三木 雄信 (みき・たけのぶ)1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱地所㈱を経て、ソフトバンク㈱に入社。27歳で同社社長室長に就任。孫正義氏の下で「Yahoo!BB事業」など担当する。英会話は大の苦手だったが、ソフトバンク入社後に猛勉強。「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター。2006年にはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト㈱を設立。同年、子会社のトライオン㈱を設立し、2013年に英会話スクール事業に進出。2015年にはコーチング英会話『TORAIZ(トライズ)』を開始し、日本の英語教育を抜本的に変えていくことを目指している。
Web広告ではディスプレイ広告からスタートし、リスティング広告やCriteo広告も順次展開。 媒体ごとの獲得単価を管理し、効果によって比重を変えたり、キーワードを追加したりと常に改善していきました。ソウルドアウトはWeb広告を行うパートナー企業として、KPI達成に向けてともに試行錯誤していきました。 運用を担当していたソウルドアウトの小島は、選択と集中が運用のカギといいます。予算が無制限なら、最初から複数の媒体に全面展開できますが、多くの企業は月に活用できる予算が限られています。予算が限られている場合、複数の媒体に一度に広告を出稿すると、1媒体あたりの利用額が少なくなってしまい、正確なデータを把握できません。 そのため媒体を選択し集中して予算を活用。獲得件数と効率を改善しながら運用していき、媒体を拡大していくことが重要といいます。結果、獲得件数の最大化につながりました。 中には無料カウンセリングまでは導けたものの入会には繋がりにくいものなど、思うような効果が得られない施策もありましたが、その都度ターゲットや媒体を見直し、キーワードの切り口を工夫するなどして、より絞り込んでアプローチができるよう施策を重ねていったそうです。 また、上手くいっていたものでも状況が変わることがあるため、ABテストを繰り返し行うなど、常に工夫を凝らしていきました。 その結果、1年ほどで獲得単価はおおむね半分、獲得件数は約20倍にまで伸ばすことができました。三木さん:どのタイミングで広告を拡大していくかなど、常に獲得単価を意識して判断しています。ただ、まずはやってみないことには当たりハズレもわからないので、さまざまな施策を行うようにしていますね。 その中でソウルドアウトさんには、さまざまな提案をしていただけるのはありがたいですね。電話をして状況を確認することもよくありますし、細かい注文も多いとは思うのですが、よく対応していただいていると感じます。広いエリアに訴求できるというWeb広告の特性は、店舗拡大の際にも効果的だったそう。また、Web広告を出稿することによって、これまでのリアル広告では見込めなかった20代の申込みが増えるなど、思わぬ利点もあったそうです。
リアルな広告との併用でWebへの流入増を狙う
Web広告で認知度と集客率を高めてきた同社。今後はさらなる認知拡大のためにも、リアル広告とWebの併用を検討しているそうです。三木さん:現在は“コーチング英会話”の認知度も広まってきているため、これまでとは違うターゲット層の獲得に乗り出すタイミングなのではないかと感じています。 また、ユーザーの流れとして、インターネットでリサーチしてからの申し込みが非常に多いです。検索してWeb広告へ繋げる導入として、リアルな広告を活用していく手法を考えています。直接見かけた物事でも、まずはネットで検索をかける時代。リアルな広告を打ち出すことで、英語学習に興味はあるもののコーチング英会話や同社に関しての認知が低い層へも、検索への働きかけができるようになります。 また、リアル広告がもつ信頼性で、企業イメージを高めていくことも意識しているとのこと。併用の際は、クリエイティブやコピーを揃えるなど、リアルな広告とWeb広告を連動させてシナジーを生みやすい環境を整えることも意識していくそうです。
三木さん:リアル広告は、ユーザーの信頼度を高める効果もあると思います。電車の交通広告などで接触頻度を高めつつ、企業イメージと信頼度を定着させることができれば、Webへの流入も増える。その結果、より低い獲得単価の実現も可能になると考えています。 うまくいっている施策が今後も同じようにいくかどうかはわかりません。常に新しい手法を探しながらチャレンジしていきたいですね。