ビジネスの現場では、KPI・KGIという言葉が使われることがあります。
しかし、「KPI・KGIという概念や違いがよくわからない」「実際どうやってKPI・KGIを設定したらいいかわからない」などの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、KPI・KGIの意味・違い・設定することのメリットまで詳しく解説していきます。
また、実際にKPI・KGIを設定する方法も解説しているので、目標を着実に達成したいと考えている方はぜひご一読ください。
KPI・KGIとは?
まずはKPIとKGIについて簡単に概要をご説明します。
KPIとは、プロセスの進捗状況を評価するための指標
KPIは、企業が目標を達成するための指標の一つで、Key Performance Indicatorを略したものです。日本語では
「重要業績評価指数」などと訳されています。
企業が目標を達成するためには、具体的なプロセスの進捗状況を把握しておく必要があり、そのための指標としてKPIが用いられます。KPIは短期間で結果のわかる数値を設定します。
KPIの例
目標が「2年後までに全体の収益を15%上昇させる」の場合、
- 「3ヶ月以内に平均客単価を1,800円から2,100円にアップさせる」
- 「1年以内に商品開発コストを20%削減する」
KGIとは、最終的に達成すべき成果を表した指標
KGIは、企業などで最終的に達成すべき成果を具体的に表した数値で、Key Goal Indicatorを略したものです。日本語では
「重要目標達成指数」などと訳されています。
1年や5年といった長期間を対象にすることが多いです。
客観的に評価できるようにできるだけ具体的な数値を設定することがポイントです。
KGIの例
- 8ヶ月後までに、企業全体の収益を15%上昇させる
- 年度末までに、市場シェアを5%から10%まで引き上げる
KPIとKGIの違いは?
KPIはプロセスの進捗状況を評価するための指標であるのに対し、KGIは達成すべき最終目標を表すための指標となります。
別の表現をすれば、企業全体として向かう方針を定めた最終目標がKGIで、目標実現に向けて設定する、より小さな部門レベルでの業績目標がKPIとなります。
KPI・KGIを設定するメリット
続いて、KPI・KGIを設定すると具体的にはどのようなメリットが得られるかをまとめてご紹介します。
メリット1: 目標に対する進捗度を定量的に可視化できる
KPI・KGIという明確な数値目標を設定することで、現時点で何%くらい目標が達成されたのか、KGI達成までにあとどれくらいの成長が必要なのかを可視化できます。
進捗度合いを可視化することで、細かな軌道修正が可能になります。
メリット2:目標が明確になりモチベーションが高まる
KPI・KGIを設定することで、チームメンバーの間で目標が明確に共有され、モチベーションが高まります。
たとえば「業務効率化」といった曖昧な目標設定だと、各々のメンバーの貢献度は評価者の主観によって決まってしまいます。
対して「営業部門の労働時間を10%削減」といった具体的な数値目標を設定すると、目標達成度合いが客観的にわかるようになりメンバーの頑張りも可視化されるので、モチベーションがアップします。
メリット3:優先順位が明確になる
業務上でやるべき事が複数になってしまった場合、何を優先すべきか分からずに、頭を抱えた経験がある人も多いかと思います。
そのような時にKPI・KGIが明確に設定されていれば、その目標達成に直結するものを優先すれば良いので、自分の業務に優先順位をつけることが容易になります。
KPI・KGIを設定する方法
以下では、KPI・KGIを設定する方法を、具体的なステップごとにご説明します。
ステップ1: KGIに用いる指標を決める
KPIを設定するためにも、まずはKGIを設定する必要があります。
KGIはその企業の戦略、最終目標なので、以下のような指標をKGIに設定するのが一般的です。
- 売上高
- 売上総利益(売上高から売上原価を差し引いたもの)
- 営業利益(売上総利益から販売費および、一般管理費を差し引いたもの)
- 市場シェア
ステップ2:KPIに用いる指標を決める
KPIを決める前に、具体的なKPIをできるだけ書き出し、整理する必要があります。
KPIに用いる指標を決める際は、ロジックツリーをおすすめします。ロジックツリーは、以下のような樹形図を用いて、問題の解決策を細分化したいときに用いられます。
上記のロジックツリーのように、KGIを達成するためのKPIがあり、さらにより細分化されたKPIへと派生していきます。
まずは、KGIを達成するために、何が必要な要素なのか、KPIを細分化して、どの指標を計測すべきか洗い出しましょう。
ステップ3: KPIの目標数値を設定する
最後に、一つひとつのKPIの数値を、具体的に設定していきます。ここで重要なのが、KGIをひもとく計算式に基づいてKPIが設定されていることです。
以下の式のように、KGIが「売上」であれば、KPIはそれを達成できる「新規客数」「リピート客数」「客単価」の数値設定が必要です。どのKPIをどのような数値目標とするのが現実的なのか、数字を当てはめながら検討しましょう。
売上 = 客数 × 客単価
= (新規客数 + リピート客数) × 客単価
(参考)KPI・KGIの具体的な設定例
ここまで紹介した3つのステップをもとに、上記のSTEP1からSTEP3の実践例をご紹介します。BtoB企業がどのようにKPI・KGIを設定するのか、具体的にみていきましょう。
STEP1:KGIに用いる指標を決める
中期経営計画で、売上高を3年後までに2倍にしたい企業があるとします。毎年の売上高を1.3倍ずつ増やせば、目標達成できる見込みです。
そのため、昨年度の売上高1,000万円を、今年度は1,300万円まで伸ばすというKGIが設定されました。
STEP2:KPIに用いる指標を決める
たとえばBtoB企業で売上高がKGIである場合を考えてみましょう。
先ほども見たロジックツリーですが、「売上高アップ」を分解すると以下の要素に分けられます。
そのため、見るべきKPIとしては、「商談数」「受注率」「月額費用」「契約期間」が適切だと考えられます。
STEP3:KPIの目標数値を設定する
最後に、具体的な数値を当てはめて、KPIごとに適切な数値を設定しましょう。
上記のロジックツリーから、売上高の計算式は、以下のように具体化できます。
売上高 = 受注数 × 受注単価
= ( 商談数 × 受注率 ) × ( 月額費用 × 契約期間 )
そこに先程のKGI「売上高1,300万円」をあてはめて、前年実績をもとに適正値をあてはめると、以下のようになりました。
1,300万円 = ( 商談数 100件 × 受注率 10% ) × ( 月額費用 13万円 × 契約期間 10ヶ月 )
そのため、KPIは以下のとおり設定できます。
商談数:100件
受注率:10%
月額費用:13万円
契約期間:10ヶ月
KPI・KGIを設定する時の注意点
KGIと関連性の薄いKPIを設定しない
KGIを達成するための過程を定め、評価するためにKPIが存在します。KPIの方針がKGIと同じ方向を向いてない場合、計画どおりに進めていたのにも関わらずKGIが達成されないという事態が起きてしまいます。
そうならないように、KPIを確実に遂行することで本当にKGIの達成に貢献できるのかという点には細心の注意を払いましょう。
現実的な数値を目標に設定する
現状と達成目標があまりにもかけ離れていたり、達成のビジョンが全く見えない目標は、機能しないどころかモチベーションを下げる可能性があります。
そのような事態に陥らないよう、KGIを確実に達成できるような数値を考えつつも、実現可能な範囲でKPIを設定しましょう。もちろん、KPIの負担が増えすぎないようにするために、KGIも現実的な数値で設定することが必要になります。
KPIを細分化しすぎない
KGI達成のために複数のKPIに落とし込みますが、その設定項目があまりにも細かすぎると、逆にその指標に振り回されてしまう可能性があります。
例えば「1日当たりの来客数を1,200人から1,500人まで伸ばす」という目標は、その日ごとの要因に左右されやすいため、KPIの設定項目としては不適切です。
KPI・KGIを達成するためのポイント
KPI・KGIを達成するために抑えておくべきポイントについてご紹介します。
目標と現状を見える化する仕組みを整える
KPI・KGIを設定したら、営業日進捗・達成率を常に意識しておく必要があります。そのために、KPIを共有するグループ内では全体の進捗を把握できるようにしておきましょう。
例えば、「ホワイトボードや掲示板を使って達成率をリアルタイムで表示する」「ファイルの共有や自動レポートを用いて、どの指標をどれくらい数値改善できたのか把握する」といったものが挙げられます。
達成のための ToDoを明確に
KPI・KGIを設定するとき、同時にそれを達成するために行うべき行動(ToDo)を選定しておきましょう。目標だけ見ていても、業務の足並みを揃えられるとは限りません。
たとえば「月間受注数を10%増やす」というKPIを設定したとして、そのためにできることを手当たり次第にやっているだけだと成果アップは期待できません。
「受注数を増やすために、1日の架電数を20件から30件に増やす」とToDoを選定することで、達成のためのロードマップが明確になります。
まとめ
KPI・KGIの意味とそれぞれの違い、そして具体的な設定方法やその際の注意点まで、順序立ててご紹介してきました。
KPI・KGIは、客観的かつ現実的な数値で設定することが大切です。今回紹介したロジックツリーを活用し、適切なKPI・KGIを設定しましょう。
また、いくら適切なKPI・KGIを設定しても、実際に運用されなければ意味がありません。きちんと継続的にウォッチし、施策に落とし込んで実施するサイクルを確立する必要があります。
KPI・KGIにもとづいたPDCAサイクルを確立し、戦略的に売上をアップさせましょう。