インターネットの普及以降、PRの概念は大きく覆されました。著しく変化するデジタル領域のPRについて、マーケターは何に取り組むべきでしょうか。また、PRに求められる役割や成果はどう変わっていくのでしょうか。
株式会社ベクトルの取締役副社長兼グループCOOを務める長谷川創氏に、その答えを伺いました。PR業界において最大手であるベクトルが考えるデジタル戦略とは?そして未来のPRをどのように見据えているのでしょうか。
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[toc] ※本記事は株式会社ベクトル提供によるスポンサード・コンテンツです。
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PRはインターネットの普及により大きな変革期を迎えた
長谷川 創(はせがわ はじめ) 1971年生まれ。1997年創業メンバーとして、株式会社ベクトル入社。2001年より取締役、2004年に株式会社アンティルの代表取締役就任。2010年よりベクトル中国の董事長及び海外子会社統括役に。現在、株式会社ベクトル取締役副社長兼グループCOO、株式会社PRTIMES社外取締役としてベクトルグループ全体の業務遂行/管理を担当。 デジタルを使ったPRの未来をお伝えするにあたって、まずはPR業界に起こった変化を時系列でお話しをさせてください。 ベクトルがPR事業に本格注力をはじめた20年前、生活者が触れていた情報は現在に比べてごく限定的でした。テレビや新聞、雑誌、ラジオの4マスを通じての情報取得がメイン。そのためベクトルがお客様から求められるのは、マスメディアを使ったPR戦略や話題作りでした。 業界にとっての転機が訪れたのも、およそ15年前。インターネットの普及によってPRの考え方が大きく変化しました。生活者と企業の間にデジタルという接触点が生まれたことで、デジタルPRに特化したクリエイティブのノウハウが必要になったのです。 例えばYahoo!ニュースのトピックス(通称ヤフトピ)を狙うために、リリースのタイトルを工夫していかに掲載されやすくするか。このリリース情報は13文字(ヤフトピの文字数)にまとめるとどうなるのか。ということが必要になったのです。 生活者の情報取得の場がデジタルへと変遷するのを受け、ベクトルが取り組んだのは、従来存在し得なかったPR手法を扱う専門部隊を立ち上げることでした。そして2005年に誕生したのがシグナル(当時、WOMCOM)です。シグナルはブログを活用したPRプロダクトをサービス提供する事で、生活者の変化に対応しました。 同年に、PRTIMES(当時、キジネタコム)も誕生しています。プレスリリース配信サービスの草創期に、メディアリストをお持ちでないお客様でも適切にメディアに情報配信できるコミュニケーションのインフラを担う役割を目指しました。2000年代前半は、デジタルに対応した新基軸でのPR思考術が生まれてきた時代だといえるでしょう。多様化するメディアに最適化したPR施策がかなめに
そして、デジタルを活用したPR戦略の幕開けから変革期に入ったのが今の時代。複数のSNSが台頭し、多数のプラットフォームが生まれました。それぞれのメディアに合わせて適切な情報コンテンツを投下していかなければ、お客様のサービスや事業内容を広く伝えることはできません。 メディアごとにどのような情報コンテンツを作り上げていくかということが、私たちの重要な仕事だと認識しています。 例えばショート音楽動画コミュニティ『TikTok』を挙げましょう。10代から20代前半に人気のサービスで、ダンスなどの自撮り動画を投稿・閲覧できます。2018年9月にベクトルが広告パートナーとして契約を締結(※PR会社としての唯一の専属契約)しました。さらに10月には、エイベックス株式会社が約25,000曲の楽曲提供を開始しています。 こうした契約締結やPRの発想は10年前のPR会社にはまったく無かったことですよね。つまり、PR会社にとっても企業のPR担当者にとっても、常に新しい考え方や手法に挑まなければならないと言えるでしょう。 一見新しいプラットフォームのように思えますが、生活者に情報を届ける手段という意味では『TikTok』も既存のメディアと同じです。新しいコミュニケーションツールとしてのメディアやプラットフォームが生まれ続ける中で、常にその新しいメディアとそのメディアの先にいる生活者への最適解をみつけだす気持ちを忘れないことが、デジタルPRにおいて大切な考え方だと思いますね。デジタルPR先進国「中国」をベンチマーク。日本での新たなサービス展開に
前述の『TikTok』を提供するのは中国のByteDance社ですが、PRの視点からも、中国には注目してきました。 私は2011年〜2014年まで中国に滞在していました。当時から中国のデジタルを使ったプロモーションやPRはかなり進んでいて。その時に培った知見が日本に戻ってきた後の参考になりました。 2011年の中国滞在時に驚いたのは、中国企業は当時からすでに通常のニュースリリースという活動はPRのメインではなく、既にインフルエンサー・マーケティングに着手していました。日本でインフルエンサーが立ち上がってきたのは2013年ですから、2年先に進んでいたことになります。 「デジタル領域でのPR」という意味では、中国をウォッチすることをPR担当者にはお勧めします。かなり上手な施策を投じていますので、参考になることも多いと思います。動画を使ったPRは、制作と配信を一気通貫して担う
デジタルを活用したPRにおいてベクトルが注力しているのは、動画クリエイティブ領域と、広告ターゲティング配信領域を横断した取り組みです。 ベクトルのグループ企業であるニューステクノロジー社は、動画クリエイティブチームと広告配信チームの2チームで事業を展開しています。動画×配信の掛け合わせということですね。制作から広告ターゲティング配信まで一気通貫で動画マーケティングのサポートを行っています。 クリエイティブの制作を担当した会社と、広告配信を担当した会社が別の会社であるときによく起こるのが、成果が出なかった原因がどちらにあるのかわからないということ。配信会社には、「クリエイティブが原因でユーザーに想像以上のリーチができなかった」という言い分があり、動画の制作会社には「動画はかっこよかったけれど、配信の方法がよくなかった」と言い分があります。これでは、制作と配信の両輪をベストマッチさせた施策を打ちづらいですよね。 広告配信という点では、今後さらに自動化や最適化の技術が進む事で、より差別化しにくい状況になると考えています。一方でどんな表現で伝えるのかといった、情報を動画クリエイティブに変化させていく力は、どんなに技術が進歩しても必要になると考えています。これまでの動画制作の世界はテレビやCMの文化から来ていると思うのですが、この数年でWebだけのクリエイティブの文化などがもっと盛んになると考えています。 例えば、Youtube・Facebook・Instagramと3つのメディアがある時に、全て同じ動画クリエイティブで良いのか?と考えると、視聴態度や動画が流れてくる枠が違いますよね。Youtubeはほぼ音声有りで見るメディアで、Facebook/Instagramは音声無しのこともあります。 その3つのメディアに対して、全部音声有りが前提のクリエイティブを作ってしまうと当たり前ですが、生活者には届かないですよね。そうするとテロップを入れて配信、という事になるのですが、そもそもYoutubeとFacebookで動画を見る時の生活者のスタンスが同じではないため、動画クリエイティブ自体を全く別のモノに変える必要があります。Youtubeの動画広告は最初の数秒は強制的に視聴を促すことが出来ますが、Facebookのフィード上だとスマホでスクロールしている瞬間に指を止めてもらう必要があったり。 これまでも、TV・新聞・ラジオなどそれぞれのメディア毎に、当たり前の様にクリエイティブを変えてコミュニケーションしていましたが、Web上でも一括りにするのではなく、そのメディアの属性にあったコミュニケーションが必須だと考えています。 ニューステクノロジー社では、そんな課題を解決するため、動画を作るところから届けるところまでを掛け合わせたサービスを展開中です。制作と配信の両輪を提供できる唯一のデジタルエージェンシーになるべく、日々ノウハウの蓄積を推進しています。 また、別のグループ会社である『NewsTV社』では、従来テキストで配信していたニュースリリースを動画に変え、「動画のリリース」として届ける”ビデオリリース”サービスNewsTVを展開しています。サービス開始からわずか3年で累計1500本以上のビデオリリースを制作し、配信しています。 動画制作費は無料であることが特徴で、制作した動画は、自社の持つ動画配信プラットフォーム「NewsTVNetwork」やSNSなどを通じて企業が届けたいターゲットのみに情報を提供していっています。 ビデオリリースを制作して、ターゲットに届ける、という一見シンプルな事業モデルですが、実は裏側で非常に複雑かつ緻密な作業をしています。例えば動画配信プラットフォーム「NewsTVNetwork」で配信したビデオリリースは「一秒ごとの離脱データ」が取得可能です。 過去の1500本のビデオリリースのデータはすべてデータで蓄積されていて、「ヒトはどんな画が入ると見なくなるのか?」というスマホ動画時代にはなくてはならない分析を行いクリエイティブを進化させ続けています。 ビデオリリース接触者と、非接触者の調査を行うとより長い時間みているユーザーの方が高い態度変容率があり、より長く視聴をしてもらうことが、結果、購買喚起などに寄与することがわかってきています。 またNewsTV社では、独自DMPを構築しており、先日、このDMPに格納されているUB数が3億UBを突破いたしました。ビデオリリースを含めた動画広告配信のターゲティングに利用されるほか、動画広告の配信や、視聴ログの紐づけなど、様々な分析に活用しています。今回DMPが保有するデータ量が3億UBを突破したことで、動画広告配信および分析基盤としては日本国内で最大級(*NewsTV調べ)のデータ量を有することとなりました。 2020年の5G時代到来、そして通信費も限りなく無料に近くなる流れの中、スマートフォンで静止画が流れていたら違和感がある時代がくると確信しています。それまでに、NewsTV社ではニュースリリース領域の「ビデオリリース」だけにとどまらず、テキストと画像で行われているコミュニケーションを動画に変えていくようなVideo Technology Campanyを目指して事業展開を加速させていっています。多様化するタッチポイント。現代のPRの考え方
ここまでデジタル活用の潮流をお話ししてきましたが、従来のマスメディアにも異なる魅力があります。 「テレビを見なくなった」という声を聞いたことはありませんか?そんなこともあり、テレビCMやテレビへのPR露出では効果が出にくくなってきたと感じる方もいらっしゃると思います。 しかし、テレビの露出で人は動きます。今でも、情報番組に店舗が取り上げられるとお店に長蛇の列が出来たり、問い合わせが増える事は沢山あります。 重要なのは、テレビが影響力を失ったのではなく、テレビに接触しない生活者の層が新しく生まれたという事実です。一概にPRを全てデジタルにシフトするという考え方はナンセンスでしょう。 従来の4マスに接触しない生活者に対して、どうすれば、生活者とコミュニケーションが図れるか?。この考え方がデジタル領域におけるPRの根幹になければいけません。 例えば、タクシーにはサイネージが設置され、搭乗者によってコンテンツを出しわけるデジタルメディアが生まれています。特にBtoB系のサービスには、タクシー広告で大きな効果を生みます。実例としてベクトルグループのNewsTVがアンジャッシュの渡部建さんを起用したタクシー広告のキャンペーンを開始しましたが、1週間で大きな反響がありました。ビデオリリースのNewsTV アンジャッシュ渡部建さんが熱血営業部長に?!タクシーのサイネージという新しいメディアに対して、ベクトルは「みんなのタクシー」とタクシー後部座席IoTサイネージ事業パートナーとなり、東京都内最大の1万台(※2018年12月時点)へ広告配信できる新しいメディアを活用できる体制を構築しています。 こちらは前述したニューステクノロジー社の新規事業として展開を行うのですが、動画制作から広告運用、そして自社メディアを持つ事で更に動画を展開する場所を増やす戦略です。オフラインからオンラインまで、動画を軸にしたコミュニケーションを展開していく予定です。 テレビに接触しない生活者の方々は何に一番時間を割いているのでしょうか。『Instagram』や『YouTube』。はたまた『Facebook』や『Twitter』、『TikTok』なのかもしれません。 情報コンテンツをどの生活者に届けるか。このメディアプランニング力が大切なのです。 この情報はどのメディアを通じて流すべきなのか、これが現代のPRで必要な考え方でしょう。 お客様とプラットフォーマーの間に立ち、生活者との最適なコミュニケーションを実現する。これが現在のPR企業が考えるべき課題です。露出の場所やそのメディアで受け入れられる情報コンテンツ。実施する施策は山程あります。