近年、新たな顧客を獲得しようとマーケティングオートメーションを積極的に活用する動きが広まりつつあります。そこで本記事では、BtoB領域でマーケティングオートメーションの導入を検討している方に向けて導入事例とおすすめのツールを紹介します。
BtoBにおけるマーケティングオートメーションの活用について理解を深め、ぜひ御社の事業に活かしてください。
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BtoBにおけるマーケティングオートメーションの役割
BtoBにおけるマーケティングオートメーションの役割は、大きく分けると次の3つです。
1.マーケティング活動の効率化と自動化
ある行動から次のアクションへと誘導するシナリオ実行そのものを自動化することができます。例えば個別の見込み顧客の興味や関心の度合いに応じ、カスタマージャーニーを設計することが可能です。
2.行動データ取得の自動化
見込み顧客のタッチポイントデータを個人情報と自動で紐づけし、行動データとして取得できます。これにより商談につながった企業の情報を自社にとっての成功事例として把握でき、マーケティング施策を最適化できます。
3.データ管理の自動化
日々複雑化するデータの自動統合・名寄せができるようになり、見込み顧客に関する情報や仮説がさらに確かなものになります。
BtoBでのマーケティングオートメーション活用事例5選
ここではBtoBでマーケティングオートメーションを活用している5社を取り上げ、その具体的な取り組みを解説します。
1. NEC:スコアリング機能による分析でメールのクリック率が約7倍に
社内の各システムにおけるデータの一元管理やプロセス・指標の可視化、個別作業による負荷を課題としていたNEC。課題解決を目指してマーケティングオートメーションを導入し、マーケティングプラットフォームを一元化・統合しました。
導入後はスコアリング機能を用いた属性やエンゲージメントの分析で、より確度の高い見込み顧客にメールを配信できるようになりました。その結果、クリック率(CTR:Click Through Rate)が約7倍にまで向上しています。
NECではさらに、こうしたマーケティング活動で得た顧客情報を活用しつつ、海外市場におけるブランド認知度の向上・海外拠点での情報管理を目標に掲げています。
今後はアジア地域を中心として新規案件獲得に向けた事業を展開する予定です。そして当該事業で蓄積したノウハウを顧客への提案に活用し、顧客との関係性をさらに深化させようとしています。
参考:
メールのクリック率を7倍、PDCAサイクルを2分の1に向上 NECが導入したマーケティング・オートメーション | Oracle 日本
2. 近畿日本ツーリスト:新旧データの活用で法人営業を効率化
自治体や企業・学校など、団体向け旅行を多く取り扱う近畿日本ツーリスト。これまで約1,000名の法人営業担当者が在籍し、それぞれの顧客への電話や訪問を担っていました。そのため団体旅行特有の細かなカスタマイズへの対応や見込み顧客の創出、受注に至るまでのプロセスなどにおいて時間的な制約が生じていました。
こうした業務の効率化を目指して、マーケティングオートメーションを導入しました。
マーケティングオートメーションには、見込み顧客の確度の高さを数値化する機能があります。これによって営業が優先すべき顧客の精査や、顧客の関心事の分析データを蓄積するといった業務が自動化されました。
加えて既存の基幹システムとシームレスに提携することで、これまでの営業データを新しいデータと統合することも可能となりました。その結果、顧客ニーズに即した商品情報を適切なタイミングで発信できるようになり、顧客満足度の向上につながっています。
参考:
近畿日本ツーリスト、法人営業にマーケティングオートメーションを採用 - ITmedia エンタープライズ
3. VAIO:KPIや施策の見直しに活用
2014年7月にソニー株式会社から独立したVAIOが掲げたビジネスモデルは、BtoCを基軸にしたものでした。しかしその一方で、BtoBを強化することも視野に入れていました。
創業当時、VAIOはマーケティング業務をソニーマーケティングに委託していました。そこで課題になったのが「VAIOのブランディング」「顧客へのよりダイレクトなアプローチ方法」「長期かつ継続的なコミュニケーション」の3点です。そしてこれらを解決すべく導入したのが、マーケティングオートメーションでした。
マーケティングオートメーションの導入によって業務フローの整備・連携の強化、顧客の関心が高まったタイミングをはかって営業からアプローチをかけるという取り組みをスタートさせたところ、営業プロセスの「見える化」に成功しました。
現在ではプロセスごとにKPIを設定し、施策の見直しや目標数値の調整などにも活用しています。現場のエンジニアの意識が変わったことで予算配分やチャネルの強化なども容易になり、結果として当初掲げた目標を大きく上回る成果を得ています。
参考:
VAIO丨導入事例丨マーケティングオートメーション(MA)ならマルケト
4. Sansan:導入3ヶ月で新規獲得が3倍、受注率が10%増加
クラウド名刺管理サービスを提供するSansanは、見込み顧客のDB管理やデータの整理に課題を抱えていた中で、2016年1月からマーケティングオートメーションの導入に踏み切りました。
この導入で受注につながりやすそうな見込み顧客を抽出できた結果、営業担当者が注力する見込み顧客の数を減らすことに成功し、有効メールの配信対象者数も2倍に拡大しました。
インサンドセールスの生産性を高める仕組みづくり・PDCAサイクルの高速化によって、本格運用の3ヶ月後には月間の新規獲得見込み顧客数が約3倍に、受注件数も約1.5倍に増加。受注率としては約10%の伸びとなりました。営業一人ひとりが顧客にかける時間が増え、1件あたりの受注額も伸びています。
さらに商談に至らなかった見込み顧客に適切なタイミングでメールを送信できるようになり、「成功パターン」が可視化されました。その結果、そのパターンを自動でアクションできるようにツールを活用するという良好なサイクルが生まれています。
参考:
MA導入3ヶ月で新規獲得3倍と受注率10%UP!Sansanが徹底するマーケティングの『当たり前』 | Ledge.ai
5. 富士通クラウドテクノロジーズ(旧ニフティ株式会社):見込み顧客の課題に合わせたコンテンツで会員数増加
富士通クラウドテクノロジーズが提供するサービスの中に、スマホアプリの開発者支援があります。しかしそこで課題となったのが「会員数の伸び」でした。その原因が手つかずのWeb施策にあるという気づきから、富士通クラウドテクノロジーが導入したのがマーケティングオートメーションです。
導入によって、Web施策への注力や複数あるツールの一元管理だけでなく、見込み顧客一人ひとりの行動履歴・会員登録に至るプロセスなどが分析できるようになりました。特にアクセス情報の解析・流入経路などの分析から、見込み顧客それぞれの興味・関心に寄り添ったマーケティング体制を確立できたのが大きなメリットとなっています。
こうしたマーケティングの体制づくりが企業と見込み顧客との接点を築くことにつながり、会員数の増加という結果を導きました。見込み顧客のレベルに合わせた多彩なコンテンツを配信すると共に施策の効果を分析することで、現在も売上が拡大し続けています。
参考:
インバウンドマーケティングでセールス&マーケティング体制を確立 富士通クラウドテクノロジーズ様|事例紹介|株式会社24-7
おすすめのBtoB向けマーケティングオートメーションツール5選
将来的にマーケティングオートメーションツールを導入したい、導入を前向きに検討したいという方に向けて、おすすめのツールを厳選して5つご紹介します。BtoBマーケティングと相性が良いツールに絞ってご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
1.salesforceと一体化したマーケティングオートメーションツール「Pardot」
Pardot
特徴
「Pardot」はsalesforce社が提供するマーケティングオートメーションツールです。ダッシュボードのカスタマイズやデータソースとの連携、あらゆるデバイスからのインサイト共有などを通して、営業効果の最大化を目指せます。
Pardotが有力な見込顧客を営業に通知し、迅速なフォローアップを促してくれます。またキャンペーン専用のページや申込みフォームも簡単に作成できるため、ターゲットを絞ったメールと組み合わせてそれぞれの顧客に合わせた最適なキャンペーンが展開できます。
また同社が提供するSFAツール「Sales Cloud」との連携が可能なので、すでにSales Cloudを利用している方は迷わずこちらを選びましょう。
価格
- Growth:150,000円
- Plus:300,000円
- Advanced:480,000円
2.豊富な機能を備えた統合型プラットフォーム「HubSpot」
HubSpot
特徴
複合型プラットフォーム「HubSpot」は、完全無料のCRMを中核にマーケティングやカスタマーサービス・セールスなどの各種ソフトウェアをつなぎます。無料ソフトウェアを複数組み合わせることで、コンタクトについても管理や情報取得が可能になるため、顧客との関係が深化するのがメリットです。
自社ウェブサイトへの呼び込みや訪問者の顧客への転換などに役立つマーケティングソフトとして、セールスサイクルの短縮・生産性向上に効果のあるセールスソフトとして、また顧客との関係を深めるカスタマーサービスソフトとしてなど、多彩な利用方法があります。
価格
- CRM Free:無料
- Marketing Hub Free:無料
- Marketing Hub Starter:6,000円~/月
- Marketing Hub Professional:96,000円~/月
- Sales Hub:6,000円~/月
- Professional:48,000円~/月
- Service Hub Starter:6,000円~/月
- Professional:48,000円~/月
※他にもプランあり。詳しくはHPをご覧ください。
Marketo(マルケト)
特徴
「Marketo」は世界39ヵ国、6,000社以上の企業で導入されている、国内外最大手のエンゲージドマーケティングプラットフォームです。マーケティングでの導入事例が豊富で、実際の導入に至るまでのサポート体制も整っています。
機能的な設計がなされており、PDCAを回すのが容易でCRMとの連携もスムーズです。各種名刺管理サービスにおける名寄せ機能などとも連携できるため、見込み顧客の重複排除・タイムリーなマーケティング施策の実施などが可能になり、効果的なフォローを行えます。
価格
要問い合わせ
Oracle Marketing Cloud
特徴
「Oracle Marketing Cloud」は外部システムと柔軟に連携できるマーケティングオートメーションツールです。
基本機能のカスタマイズやチャネルごとのデータ統合が可能で、有望な見込み顧客の発見・顧客ごとに最適化されたプロモーションの実現に力を発揮します。またコンテンツの分析とパーソナライゼーションを通して、最適化された顧客体験を提供できるのも強みです。
「Oracle Marketing Cloud」によって自動化されたナーチャリングフローは、見込み顧客の確度を高めて営業の成果向上につながります。
価格
要問い合わせ
5.国産認知度No.1!集客に強い「SATORI」
SATORI
特徴
「SATORI」は匿名の見込み顧客の集客から育成(アンノウンマーケティング)に長けたマーケティングオートメーションツールです。
ポップアップ・リターゲティング広告・プッシュ通知などを活用し、見込み顧客のデータを獲得します。確度の高い見込み顧客への自動的なアプローチや案件化しなかった場合の再アプローチなどを視野に入れた顧客情報の一元管理、高度なマーケティング施策も「SATORI」の得意とするところです。
機能がシンプルなので、導入後最短1日で運用を開始できます。手ごろな初期費用と月額利用料に加えてマーケティングセミナーが随時開催されているなど、導入・運用のハードルが低いのも魅力の1つといえるでしょう。
価格
- 初期費用:100,000円
- 月額:100,000円
まとめ
BtoBにおけるマーケティングオートメーションの役割と具体的な導入事例、良質なツールを5つご紹介しました。本記事における成功事例を参考に、御社の課題解決に最適な活用方法とツールを選択してください。マーケティングオートメーションの導入と最適な活用は、御社の業務改善・業績向上に大いに役立つことでしょう。
参考サイト
BtoBマーケティングとマーケティングオートメーション(MA)|MarketingBase
マーケティングオートメーションとは|BtoB企業が具体的な活用イメージを持つためのヒント|LISKUL
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