ある日、上司から「マーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)を導入してほしい」と突然のお達しが……。相談できる相手もおらず、孤軍奮闘するマーケティング担当者にとっては一大事。今のMAツールのトレンドって? 結局、MAツールって何ができて、自社ではどう選べばいいの? 他の会社ではどうやっているの? こういった疑問や悩みは尽きません。
そこで今回は、MAツールを選ぶなら絶対に知っておきたいポイントを、導入のプロに教えていただくことにしました。お話を伺ったのは、1200社以上へMAツール導入の支援をしてきたtoBeマーケティング株式会社代表取締役CEOの小池智和さんです。
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中小企業でも、MAツール導入が一般的になってきた
<プロフィール>小池智和さん toBeマーケティング株式会社 代表取締役CEO。株式会社リクルートで企業の販促支援事業の営業を担当。株式会社セールスフォース・ドットコムに入社し、パートナー支援や地域スキームを構築した。2014年8月より2BC株式会社の設立に参画し、マーケティングオートメーションシステムの導入支援を中心に事業を推進。そこから分社し、toBeマーケティング株式会社を設立した。著書に、『マーケティングオートメーション 最強の導入手法』(KADOKAWA)がある。 ―― まず、最近のMAツールを取り巻く状況について教えてください。 小池:大手企業ではMAツールの導入はすでにかなり進んでいます。とはいえ、最近は中小企業を中心に当社へのMAツール導入の問い合わせが非常に多くなっています。多くの企業が、デジタルマーケティングへ積極的に取り組み始めたと強く感じます。 特に、経営者はMAツールのことをよく理解してくださる方が多いです。ただ、MAツール担当者に導入目的が共有されなかったり、そもそも担当者がいなかったりするケースもあり、そこはサポートが必要だなと感じています。 ―― なぜ、MAツールはここまで注目されているのでしょうか。 小池:BtoBビジネスでは近年、企業のWebサイトの情報を見ずに商品やサービスを購入することが稀になりました。つまり、何か得たい情報や課題がある顧客は、必ずWebサイトを見て購入を検討しているのです。 こういった顧客のWebサイト上の行動は、マーケティングや営業活動につながる重要なヒントといっても過言ではありません。そうした顧客企業の購買行動の変化から、MAツールへの注目が高まっています。 参考:『マーケティングオートメーション 最強の導入手法』:企業の購買活動のこれまでと今 ―― Web上の行動を追えるのがMAツールなんですね。 小池:はい。もちろんそれだけでなく、顧客のWeb上の行動データをもとに次のマーケティング施策の実行を自動化できます。例えば、「Webサイトで、顧客が商品Aのページを閲覧したタイミングでメールを自動送信する」といったものですね。 このように、誰に、何を、いつ、どこで、どんなマーケティング施策を実行するのかを設計することが「シナリオ」なのです。 よく勘違いされるのですが、MAツールは自動で全てを判断し、勝手に実行してくれるわけではありません。誰にどういう施策を打つのか、事前に人の手でシナリオ(設計図)を用意して初めて自動で実行してくれる。これは、工場での生産工程の自動化に似ています。 そして、「MAツールを導入すれば、マーケティング部門のタスクが減る」と思われがちですが、実は逆です。MAツールの役割は業務改善ではありません。シナリオやマーケティングプランの設計はマーケター自身行わなければなりませんし、複雑なシナリオであるほど用意するコンテンツの量も増えます。ただ、MAツールを導入すれば、「選択できるマーケティング施策の幅」は格段に広がるんです。 また、Web上での顧客の行動履歴はMAツールで把握できますが、それだけでは営業成果への貢献度は分かりません。CRM(顧客管理システム)と連動させて初めて、MAツールで得たデータに意味をもたせられるのです。MAツールとCRMの連携で、営業が行動できる情報になる
―― 先ほどの「CRMを連動させて初めて、MAツールのデータに意味が与えられる」とはどういう意味でしょうか? 小池:CRMは「顧客の属性情報や顧客と商談した内容・活動の状況」などの情報を主に営業が入力し、社内で共有する顧客管理システムです。CRMの営業情報があってこそ、MAツールの顧客行動履歴は効果を発揮します。 例えば、CRM上では「失注」の記録がある顧客がいたとします。MAツールとCRMが連携していれば、その顧客が自社のWebサイトに3カ月ぶりに訪問したと分かるんです。それは、もしかするとサービスを再検討しているからかもしれません。 ―― MAツールとCRM、どちらかだけではダメなのでしょうか? 小池:もしCRMだけ導入し、MAツールを使っていなければ、顧客のWebサイト上での行動が分からず、重要な商談のチャンスを逃すかもしれません。また、MAツールだけ導入してCRMを使っていなければ、顧客のWeb行動を把握できたとしても、それを営業活動に生かせない可能性もあります。どちらもまだ使っていないなら、MAツールとCRM両方の導入を強くおすすめします。 ただ、予算の関係などでどちらかを選ぶ必要があるなら、先にMAツールの導入をおすすめします。例えば、まず顧客情報はExcelなどで管理し、CRMを導入した後に顧客情報をインポートするなどですね。 1点注意すべきなのが、MAツール導入前にWebサイトに訪問した顧客に対しては、Cookieを付与できないということです。つまり、顧客のWeb上の行動履歴は分からないんです。データ蓄積の機会を逃さないためにも、CRMよりもMAツールを先に導入したほうがいいでしょう。 マーケティング担当者の役目は、営業に「いいリード」をパスすること。そのために、MAツールとCRMの関係を知り、合わせて活用していくのがとても大事なのです。絶対に後悔しないためのMAツール選びのポイントは?
―― MAツールは種類が多く、自社に合ったものを探すだけでも正直大変です……。MAツールを選ぶとき、特に注意すべきポイントはありますか? 小池:よくある悪い選び方は、MAツールがもつ機能のチェックリストを作り、有無などを◎、△、☓などで評価し、得点が高いものを選択する選び方ですね。例えば、本来は自社の課題解決に最も必要な機能が付いていないのに、なんとなく得点が高い、使いそうな機能が多く含まれているなどで、適していないツールを選んでしまうケースがよくあります。 MAツールを選ぶ際、確認すべきなのは以下のポイントです。- 自社のシナリオを達成できる機能や拡張性、カスタマイズ性があるか?
- 自社で使っているSFA(営業支援システム)やCRMと連携できるか?
- MAツール導入後に、必要なサポートをしてくれるか?