動画広告は年々規模の拡大を続け、多くの企業がプロモーションや商品の説明などに動画を活用しています。
動画広告の制作をお考えの企業の担当者の方に向けて、本記事では、動画広告の制作フローや目的別の制作ポイントを分かりやすく解説します。
また、動画広告は自社で制作できるのか、どこかに依頼した方が良いのか、と迷うことがあるかもしれません。自社で制作する場合に必要となる機材やスキル、発注先にはどのようなところがあるのか、それぞれのメリットとデメリットも説明します。
さらに、発注先の選び方のポイントも紹介していますので、動画広告を制作する前にぜひ参考にしてみてください。
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動画広告を制作する3つのステップ
会社のプロモーションや新商品の紹介など、企業が公開している動画にはさまざまな種類がありますが、これらがどのように制作されるかご存知でしょうか? 動画広告の制作には大きく分けて企画・動画作成・公開の3つのステップがあります。ここでは各ステップを分かりやすく解説します。ステップ1. 企画
動画広告の制作は、「企画」を考えるところから始まります。まずは「誰に、何を伝え、どのような結果が欲しいか」といったターゲット層や動画の目的を明確にしましょう。例えば、「専門学校、短大・大学といった学生に、学生向けクレジットカードサービスの存在を伝え、新規カード会員を増やす」など、なるべく具体的な企画にすることが必要です。 ターゲット層や動画の目的が明確になったら、シナリオを決め、動画の長さやテイスト、配信タイミング、動画配信プラットフォーム、予算を検討します。 テイストは、実写かアニメーションかを決め、配信のタイミングはおおよその公開月を決定しましょう。また、動画配信プラットフォームには、YouTube・InstagramなどのSNSのほか、自社サイトでの公開などが考えられます。 そして、予算を考慮に入れ、自社で動画広告を制作するのか、制作会社に依頼するのかまで決定します。 参考:動画広告市場の現状と、おさえておきたい制作会社まとめ ビジネス用の動画作成ツールの選び方とおすすめツール厳選6選ステップ2. 動画制作
ステップ2では、動画の撮影や音声の収録などを行います。動画の素材がそろった段階で撮影した動画をつなぐ、余分な箇所をカットする、テロップを入れる、BGMや効果音、ナレーションを付けるなどの編集作業をして動画を完成させます。試写で動画全体を見直し、必要であれば再編集も行います。ステップ3. 公開
動画広告が完成したら、YouTubeなどのSNSや自社サイトなど目的にあった方法で動画を公開します。公開後はクリック数や再生回数、CV率などをチェックし、ステップ1の企画で計画した目的を達成するためにPDCAのサイクルを回しましょう。目的別動画広告制作のポイント
動画広告は、認知度の拡大、商品の購入促進や採用活動など、広告の目的によって制作内容が変わってきます。ここでは、動画広告の主な目的別に制作のポイントを解説します。1. サービス紹介用動画広告はストーリー性を持たせて分かりやすさをアップ
動画広告は最初の5秒が勝負となるため、動画再生の最初の段階で伝えたいことをはっきりさせることが重要です。また、インパクトのある伝え方で興味・関心を持ってもらえる構成にする、起承転結を意識したストーリー性を盛り込む、動画視聴後の行動を促す動線を考えるなど、内容を反映したシナリオにしましょう。【成功事例1. アニメーションによる解説で問い合わせ件数が増加】
ダスキンライフケア(旧ダスキンホームインステッド)は、40~60歳の女性にターゲットを設定し、アニメーションで介護支援サービスを分かりやすく解説したため、問い合わせ件数が倍増しました。アニメーションを効果的に使うことで、文章だけではイメージしにくい介護サービスの詳細な内容・流れを伝えることにも成功しています。画像引用:ビジネスアニメ制作実績:株式会社ダスキン|YouTube
2. 企業のロゴなどを動画に挿入して認知度をアップ
「認知拡大」を目的とした動画広告のポイントは、有名人の起用や印象に残りやすい音楽の採用などによるインパクトのある映像になっているか、という点です。また認知してもらいたい名称やロゴを動画内に挿入することで認知度の向上が見込めます。【成功事例2. Instagramのストーリーズで1,000万人以上のリーチを獲得】
日本航空株式会社(JAL)は、世界的なラグビーイベントと合わせてInstagramのストーリーズ広告を制作。ラグビーの試合を楽しめるよう動画で簡単なルールを解説し、動画の画面上下にはJALのロゴを挿入して認知度の向上にも繋げました。 ストーリーズで気軽に視聴できることから1,000万人以上のリーチを獲得しました。画像引用:畠山健介の15秒で簡単にわかるラグビー講座-JAL|リチカ
3. プロモーション用動画広告なら魅力を最大限アピールできるよう具体的に伝える
施設案内などのプロモーション用動画広告の効果としては、外部からは知り得ない各種施設の具体的な設備・サービスなども映像を通して魅力的かつ的確に伝えることで、信頼感・安心感の向上も期待できる点が挙げられます。 ただし、視聴者がわかりにくいと感じると、動画の続きを見てもらえない可能性があります。専門用語や難解な言葉は避けて、誰が見てもわかりやすい動画の制作を意識することが大切です。【成功事例3. 新規ユーザーの半数以上がYouTube経由での申し込みに】
スキー体験を提供する米企業Majestic Heli Ski は、スキー場やロッジの様子をYouTubeで配信。広大な雪景色やスキーを楽しむ人たち、ロッジでの食事などを映像に盛り込み、サービスを具体的にイメージさせる内容にしました。 その結果、新規ユーザーの半数以上がYouTube経由での申し込みとなり、売上も過去5年間で毎年25%ずつ増加するなどの成果を上げています。画像引用:Alaska Heli Skiing - Majestic Heli Ski Promo Video (2016)|YouTube
4. ハウツー(How To)動画は視聴者目線での制作が要
製品の使い方を動画にしたハウツーは、視聴者の視点で制作することが重要なポイントとなります。専門用語の解説を入れる、説明のまとまりごとに区切りをつけるなど具体的で分かりやすく伝える工夫が必要です。【成功事例4. 視聴者の9割以上が動画を最後まで視聴・購入率2倍アップ】
日本ロレアル株式会社は、オンライン販売を伸ばすためにヘアトリートメント商品Kerastase Parisのハウツー動画を採用。商品購入のリンクを貼って、動画視聴後に買えるようにしました。視聴者の9割以上が最後まで動画を視聴し、購入率が2倍増加、平均注文額が動画を視聴しない人よりも1.2倍多い結果となりました。 参考:売上アップにつながる!動画マーケティング成功事例11(日本・海外)|EIZO CONVINIENCE CLUB5. 採用動画は独自性を盛り込み応募者にアピールする
採用の動画は、利用シーンを想定しておく必要があります。例えば、会社説明会の前に流す、大人数の前で流して短時間で応募者の心を掴む、採用サイトに掲載して応募者数アップにつなげるなどがあるはずです。また、用途に応じてロングバージョン・ショートバージョンを作成する、内容を変更するなど効果的な使い方を考えることも有効です。 成功したプロジェクトや楽しい雰囲気を動画の素材として選ぶことも大事ですが、視聴者にリアリティを感じさせないものは逆効果になるので注意が必要です。【成功事例5. アニメーションの活用で再生回数62万回超え】
計測機器の販売元タケモトデンキは、アニメーション「Peeping Life」とコラボレーションした採用動画を制作しました。知名度が高くない中小企業という立場を利用した、シュールなストーリー展開が話題となって、現在では再生回数62万回超を記録しています。また、堅い老舗企業というイメージ打破にも動画が一役買っています。画像引用:【ハカルプラスx Peeping Life】タケモトデンキの会社説明会|YouTube
動画広告を制作する2つの方法
動画広告を制作する方法は大きく分けて、自社での制作・外部に依頼して制作の2パターンがあります。適している制作方法に迷う場合は、下記のように判断すると良いでしょう。- 費用をできるだけ抑えたい、柔軟なスケジュールで制作したい、という場合は自社制作
- クオリティの高い動画にしたい、プロから効果的な提案を受けたい、という場合は外部制作
方法1. 自社で制作
撮影機材の性能が向上し、優秀なアプリも数多くあるため、自社での動画広告制作のハードルは以前よりも下がったと言えるかもしれません。動画の制作は、動画撮影や編集のスキルを持った1~3人程度のチーム制で可能です。制作期間
制作する動画の内容や長さにもよってはりますが、経験のない初心者が制作に慣れるまで動画制作に1本30時間程度かかることもあります。費用感
自社で制作する場合はアウトプットイメージによって予算感はまちまちですが、最低限のものを作成するにあたっても「動画を撮影するカメラ」と「動画編集アプリ」は用意しましょう。 動画撮影用のカメラは、予算をかけたくない場合はスマホのカメラなどでも対応可能です。特に最近のカメラであれば画質のレベル自体が向上しているので、最初のうちはスマホで十分でしょう。 撮影後に必要となるのが「動画編集アプリ」です。iMovieなどの無料スマホアプリやVideoProcなどのPCの無料ソフトなどでも対応可能ですが、使用できる機能が制限されているなどのデメリットもあるため、数千円~数万円程度の有料の動画編集アプリをおすすめします。 下記のページでは、動画作成ツール6選を紹介しています。 参考:ビジネス用の動画作成ツールの選び方とおすすめツール厳選6選 また、テンプレートが豊富で初心者でも高度な動画が作りやすい動画生成ソフトもあるので、無料トライアルの利用やサンプル動画を確認して、検討してみてください。 参考:フォーマット一覧|RICHIKA サンプル動画|VideoBrainメリット
- 必要機材がそろっていれば、すぐに制作に着手できる
- 外注よりも費用を抑えることができる
- 社内での調整を行えば柔軟なスケジュールで対応できる
デメリット
- 担当者の経験によってクオリティにばらつきが出る
- 動画制作の業務経験がある人材がいない場合、制作工数がかかる傾向がある
- 動画業務の専任でない場合、社内リソースに負荷がかかる
方法2. 制作会社に依頼
「クオリティを重視した動画広告を制作したい」「十分にこちらの要望をヒアリングしてもらい効果的な提案を受けたい」という希望がある方には、制作会社への依頼をおすすめします。制作期間
依頼準備~ヒアリング・制作会社からの提案で2~3週間、実写動画の場合で1.5カ月~3カ月程度かかる場合が多いですが、動画の内容によって変動しあます。費用
制作会社にかかる費用を構成するのは、ディレクションや台本作成などの企画関連費用、スタジオや撮影機材などの撮影関連費用、映像編集やナレーションなどにかかる編集関連費用の3つです。 動画広告の制作費用は、動画の長さやナレーションの有無で異なりますが、相場は会社紹介やPR動画で50万円~100万円、YouTube向け動画で10万~100万円、アニメーション動画で20~50万円となっています。メリット
- 得意領域に合わせて依頼先を選択することができる
- 高品質を担保しやすい
- 動画広告に関するノウハウが豊富
デメリット
- コストが高くなりやすい
- 社外の人とのコミュニケーションが必要になるため、自社の意向の認識にズレが生じるなどの問題が発生することがある
- スケジュールの柔軟性が低い
番外編:クラウドソーシングに発注
クラウドソーシングサービスとは、仕事を依頼したい人と仕事を受注したい人を、効率よく繋いでくれるサービスのことです。個人(フリーランス)と依頼者が直接契約を結ぶプラットフォーム型と、個人と依頼者の間に提供会社のディレクターが入る受託型があります。 近年、動画制作を専門に扱うクラウドソーシングサービスが登場し、このサービスを利用する企業も増えています。しかし、クラウドソーシングは自社で広告の運用まで対応できるのであれば費用対効果良いですが、自社のリソースを温存するなら動画制作会社に制作から運用までお任せする方法がおすすめです。制作期間
依頼主である自社の都合に合う映像クリエイターを選ぶことが出来れば、柔軟なスケジュールで対応してもらえます。費用
企画から撮影・編集までスタッフ1人で対応できる内容であれば、1本20~30万円でも対応可能な場合もあります。メリット
- 比較的費用を抑えることができる
- 映像クリエイターの選択によって、多様な動画制作に対応できる
- 短納期も対応可能なことがある
デメリット
- 担当者によってクオリティに差が出やすい
- メールなどでのコミュニケーションが多く、細かい要望が伝わりにくい
- 運営会社が窓口をサポートする受託型クラウドソーシングの場合、中間マージンが生じる
- 広告の運用は自社での対応となってしまう。