一度は耳にしたことがある「ポジショニング」。
しかし、他の人にうまく説明できない。活用方法はもちろん、自分で使うにしても少しあやしい…。
そんな方が多いのではないでしょうか。
今回は、複数の事例とあわせ、ポジショニングの決め方をご説明します。
普段使っている身近な商品が市場でどんなポジショニングのものなのかを知るのは、
とっても面白いです。
実践的に使える知識を楽しみながら身につけていきましょう。
▼目次
1. ポジショニングを変えるだけで売上が8倍?!
2. ポジショニングってなんだろう?
3. ポジショニングの決め方
4. ポジショニングで成功!8つの事例紹介
1.ポジショニングを変えるだけで売上が8倍?!
ポジショニングの威力を知っていただくために、シーブリーズの事例をご紹介します。
資生堂が展開する「シーブリーズ」というボディケア製品のブランドがあります。海に行ってシャワーを浴びたあとなどに使用して、ひんやりするデオドラントが主軸です。
このシーブリーズが2、3年前、マーケティング戦略を大幅に変更しました。かつては20代から30代の男性市場を狙っていました。ところが次第に海に行く人も少なくなり、
ブランドも高齢化して、時代遅れのブランドになってしまっていた。
そこで資生堂は考えたはずです。事業を止めてしまうのか、てこ入れをして継続するのか。意思決定をしなくてはいけません。
そのときに出した結論は、「シーブリーズというブランドは生きている」。そこで完全なリ・ポジショニングに乗り出しました。ターゲットとしてはティーンエージャーを狙うことにした。宣伝をご覧になった方もいると思いますが、これまでの「海」「夏」といったイメージから、日常シーンでの使用に訴求ポイントをもってきました。街の女子高生を
ターゲットに変えていたのです。こうした目算は成功裏に終わり、売上は低迷期の8倍にも達しました。
引用:PRESIDENT Online┃事例から学ぶマーケティング概論(第3回)
つまり、シーブリーズは次のようにポジショニングを次のように変更しました。
・20~30代男性が海で使用する商品
↓
・女子高生が日常シーンで使用する商品
これにより、なんと売上が低迷時の8倍にもなったそうです。
2.ポジショニングってなんだろう?
ポジショニングの威力、感じていただけましたか?
ポジショニングってとても大切なんです。でも、そもそもポジショニングってなんなのでしょうか?
用語集で調べるとこう載っています。
ポジショニングとは、ターゲット顧客の頭の中に、自社製品について独自のポジションを築き、ユニークな差別化イメージを植えつけるための活動。顧客に自社製品のユニークな価値を認めてもらうことで、競合製品に対して優位に立つことを目的にしている。
つまり、ポジショニングは、マーケティング戦略の一部で、「ユーザにその商品・サービスをどのように認識してもらうのか」を決めることです。
次に、ポジショニングを決める手順をご説明します。
3.ポジショニングの決め方
参考:『MBA マーケティング』数江良一監修 株式会社グロービス著 ダイヤモンド社
【ポジショニング決める前に】
ポジショニングを決める前に、環境分析・市場機会の発見、セグメンテーション、ターゲティングを
する必要があります。
まず、市場ボリュームを定量的に把握し、市場の特性やニーズを把握します。
ユーザがその商品・サービスを購入するときに何を重要視しているかを考えます。
次に、市場を細分化して、どういったユーザの塊があるかを整理します。
セグメンテーションについては、当ブログ下記記事をご参照下さい。
【LISKUL】セグメンテーション|3つの有名事例から5分で活用方を身に受ける
さらに、どのセグメントを狙うかを決定します。(ターゲティング)
【ポジショニングの決め方】
ここで、ポジショニングの出番です。
ポジショニングを決めるには、「この商品○○で1番なんです。」「この商品は○○と比べて良いんです。」という○○の部分を決める必要があります。つまり、どの軸で他商品と差別化を図るのかということです。
軸を決める視点は様々あり、次のようなものがあります。
【ポジショニングの軸の例】
(1)顧客視点で見るとどうなのか
(2)競合と比較してどうなのか
(1)-1. 特定の製品属性
→ 例えばマクドナルドは「低価格」、モスバーガーは「材料の品質や高級感」
(1)-2. 製品が提供するベネフィット
→製品が満たすニーズのこと、つまり「自分流にカスタマイズできる」DELLのパソコンや、
「デザインに強い」 apple社のマック
(1)-3. 製品が使用される機会
→「出張など持ち運びに便利な」パナソニックのレッツノート
→「安全な幼児用」から「刺激が少ないシャンプーが必要な大人向け」にリポジショニングした
ジョンソン&ジョンソンのシャンプー
(2)-1. 競合製品との関係
→VISAは広告の中で、競合であるアメリカン・エキスプレスと比較。
「受け付けてもらえない」アメリカン・エキスプレスより「どこでも使える」VISAカード
(2)-2. 競合製品と距離
→セブンアップは長年、自社製品を「コーラではない飲み物」、
コカコーラやペプシとは別の爽やかさで、のどの渇きをいやす飲み物であるとポジショニング
(2)-3. 製品の種類
→例えばマーガリンには、バターと比較してポジショニングされているものもあれば、
調理油との比較でポジショニングされている
→「料理に使うもの」ではなく、「冷蔵庫や生ごみの脱臭剤」としたアーム・アンド・ハマーの、重曹(タンサン)
【注意点】
2軸を選定する際には、それぞれ相関性の高い軸を選定しないように注意します。
例えば、「価格」と「高級感」。
高級感あれば、価格が高くなるのは、当然のことだからです。
このように相関性が高い軸を設定してしまうと、2つの軸を作った意味がなくなってしまい、
意味のないポジショニングになってしまいます。
ポジショニングの決め方はわかりましたか?
最後にポジショニングで成功した8つの商品・サービスの事例でポジショニングの活用方法を再確認しましょう。
参考:『コトラーのマーケティング入門』フィリップ コトラー著 ピアソンエデュケーション出版
4.ポジショニングで成功!8つの事例紹介
【事例1】レッドブル
コンビニに行き缶の横を見てください「こころ、からだ、みなぎる」と書いてあります。
リポビタンDを参考にしながらもポジショニングを変えています。
リポビタンDは疲労回復飲料、すなわち「マイナスをゼロにする」という
ポジションです。
一方レッドブルは、同じタウリンを使いながら「エナジードリンク」と称してスポーツの結果を残したいとき、試験勉強で頑張るとき、クラブで朝まで踊るときなどパフィーマンスをUPしたいときに飲むものという定義付けをしました。つまり「ゼロをプラスにする」というポジションです。
引用: アットオフィスの社長のブログ┃レッドブルのポジショニングに学ぶ
疲労回復飲料というと、リポビタンD、ユンケル、キューピーコーワ、アリナミン、エスカップ、チオビタなど様々あります。これらは「疲れた体を回復します」という商品です。
それに対してレッドブルは「力を発揮したい時に飲む物」というポジショニングで、差別化を図っています。
先行商品のたくさんある市場では、ポジショニングを変えることが大きな意味を持ちます。
【事例2】すき家
従来の「吉野家」を含めた牛丼業界の「ターゲット特定(STP)」は「セグメンテーション」…吉野家をトップとする牛丼市場。「ターゲティング」…働くオトコを中心とした一人客。「ポジショニング」…早く、安くを中心に胃袋を満たす。これが従来の
牛丼業界の「ターゲット特定(STP)」でした。
では牛丼業界のトップを逆転する「すき家」のマーケティング戦略は、どのように考えられていたのだろうか…。「セグメンテーション」…近年成長している外食市場の
中食市場。「ターゲティング」…ファミリー層、女性客を大幅に拡大。「ポジショニング」…楽しい食卓を家庭の外で気軽に実現。
引用:経営コンサルタント戸塚友康の推進力ブログ|牛丼「すき家」のマーケティング戦略
すき家はセグメンテーションから既存市場と差をつけたことで、牛丼業界だけでなく中食業界で戦うことが出来ました。
「できたての食事を楽しく食べたいファミリー、女性」をターゲットとし、ターゲットの頭の中に
「マクドナルド」や「ファミレス」と並ぶ選択肢として「すき家」をイメージさせることに成功しました。
【事例3】カクヤス
酒類の量販チェーンです。店舗販売で一般顧客向けにも小売をしていますが、飲食業の店舗への配達も行っています。
Segmentation(セグメンテーション)
カクヤスはまず顧客店舗への卸及び配達と、自店舗での小売を分割しました。
Targeting(ターゲティング)
そして、飲食店、特にバーやクラブなど大量に酒類の購入が見込める酒場をターゲットとしたのです。
Positioning(ポジショニング)
その上で、電話一本でビール一本からでも配達するという体制を作り、お酒が足りなくなったらすぐに調達できる店というポジションを確立しました。
引用:U-NOTE|【STPマーケティングの成功事例】企業が成功した裏には企業の絶え間ない努力があった
高級クラブなどは、1本20万以上するワインや200万のドンペリなどを在庫として持っているとリスクがあります。しかし、在庫を減らして品切れになってしまっては売上がに影響がでます。そこで、
カクヤスは「1本でもすぐに配達してくれるお店」というポジショニングで成功したのです。
【事例4】ビリーズブートキャンプ
少し前に大流行した「ビリーズブートキャンプ」を覚えておるかの?あれを支持した人たちは、多くのダイエット食品やプログラムを試した後で「やはり体を動かさない楽な
ダイエットは効果が出ない」と薄々考えていたセグメントなんじゃ。
何度もダイエットに失敗し、「やっぱ楽して痩せるわけはないわなぁ~」などと考えていた人にとっては軍隊式のハードなプログラムは最高のダイエットプログラムに映ったのじゃよ。
引用:マーケティングキャンパス|STPこそマーケターの基本中の基本:セグメンテーション
ビリーズブートキャンプは、「つらいダイエット」というポジショニングをとりました。
「つらい!」ダイエット」と「つらくないダイエット」、
あなたならどちらを選ぶでしょうか?もちろん「つらくないダイエット」でしょう。
では、「いろいろ試したけど、効果がでない。やっぱりハードな運動をしないとやせないんだ」
と思っているところに「自宅で気軽にできるつらいダイエットだよ!」と言われたら購入するかも知れません。
セグメント、ターゲットを考慮したポジショニングをすることが成功の鍵となるようです。
【事例5】ポカリスエット
ポカリスエットは、発売当初は、市場の殆ど無かったところに、「スポーツ飲料」としてポジショニングを行い、その市場で消費者の大きな支持を得ました。
しかし、スポーツ飲料市場に競合ブランドが増えたことで、市場規模が限定的なスポーツ飲料市場から、市場規模の大きな清涼飲料市場へ進出を始めます
その際、市場を変えても「イオン飲料、水分補給」という点は維持し、清涼飲料の中でも「健康によい清涼飲料」として、リ・ポジショニングすることで、他の清涼飲料との差別化を図っています。
引用:株式会社ディープインパクト|マーケティングの基本再考!リ・ポジショニングとは?
スポーツ飲料の市場では、アクエリアスに次いでシェアNo.2がポカリスエットですが、
2商品のポジショニングは大きく異なっています。
アクエリアスは、「スポーツ選手も飲んでいる、スポーツ飲料」というポジショニングで、
ポカリスエットは、「水分補給に適した、健康に良い清涼飲料水」というポジショニングです。
競合とは違うポジショニングをとることで、差別化を図っている例です。
【事例6】アサヒスーパードライ
「アサヒビールでは、それまでは製造部門のつくったものを営業部門は黙って売るだけであった」そうです。しかし、この消費者志向CIに則り、1985年に5000人の消費者嗜好調査を行い、消費者の好みが「口に含んだ時の味わいと喉越しの快さ」であることを発見しました。
これが、後に「コクとキレ」となりました。それまでは、「重くて、苦い」のが本格派のビールとされ、トップブランドのビールはこの傾向でした。酒飲みの中年向きのビールが本格派と思われていたのです。
アサヒがスーパードライを発売したときに、競争メーカーのある方は「あんな軽いビールは、売れないだろう」と酷評していました。しかし、当時(1984-85年)は酎ハイブームの直後であり、飲み口の軽い酎ハイになれた若年層は、軽くて苦くないスーパードライの方が飲みやすく、急速に普及しました。
引用:メルマガスタンド[メルマ!]|効く広告活動のヒント-29 ポジショニング-1
アサヒスーパードライは、キリンビールの「お酒の好きな中年向けの、重くて、苦いビール」というポジショニングに対して、アサヒスーパードライは「軽くてあまり苦くない」というポジショニングを
採用して成功したのです。
【事例7】NTTドコモ
NTTドコモは、2008年に価値観・ライフスタイル別に顧客を4セグメントに細分化し、
それに携帯端末シリーズを当てはめてラインナップを再編成した。具体的には、ファッション・デザイン志向(「スタイル」)、ビジネス機能志向(「スマート」)、映像・ゲーム・エンターテイメント志向(「プライム」)、最新デジタル技術志向(「プロ」)という分類である。そしてそのポジショニングマップが図表-1である。縦軸は「多くの機能を使う」か「通話やメールを中心に使う」という顧客の使い方・目的の分類である。また横軸は「実用的」か「感情・情緒・アクセサリー」という顧客の携帯端末についての意識・デザインということであろう。この2軸で4つの象限に分け、NTTドコモの携帯端末シリーズのポジションを示したのである。
引用:market scope Mizuno’s Scape|ポジショニングマップとイノベーション
これは自社商品の住み分けのためにポジショニングの考え方を利用した例です。
「携帯がほしい」と思っているユーザの中にどんな塊があるのか切り分け、(セグメンテーション)
それぞれの塊のニーズを満たせる商品を整理しました。
これによって、まだニーズを満たせていない塊が発見されたり、それぞれの塊に合わせた商品マーケティング施策ができるようになったりました。
それぞれの商品について、ポジショニングがはっきり決まっていると、4Pの施策をスムーズに決めることができます。
4Pについて詳しくは当ブログの下記記事をご参照下さい。
【LISKUL】事例で解説!マーケティングミックス(4P)とは
結論
今回はポジショニング事例と決め方の手順をお伝えしました。
ポジショニングを考える時には、マーケティング戦略の流れに沿っていること(ポジショニングを考える前に市場の特性やニーズを把握し、市場を細分化してユーザの塊を見つけ、ターゲットとする層が
決まっていること)が大切です。
この記事が、ポジショニングの理解の一助となれば幸いです。