ロングテールはWebマーケティングの戦略の一つです。
ネット販売を行っていると、売上がヒット商品に偏ってしまうことがあります。売上の底上げを目指そうにも、どのような施策を行えばいいかわからないというご担当者様も多いのではないでしょうか。ロングテールはニッチ商品の売上を上げることができるという戦略で、近年注目を集めている考え方です。
今回はロングテールとは何か、メリット・デメリットを踏まえてご説明します。成功事例や戦略の実行法についてもご紹介していますので、ぜひ参考になさってください。ロングテールの概要を正しく理解して、売上アップを目指しましょう。
ロングテールとは
ロングテールとはひとことで言うと、ニッチな商品群の売上合計がヒット商品の売上を上回り、全体の売上を大きくするという考え方です。
例えばプロが使うような専門的な工具や、XLサイズ以上の服のみを取り扱うお店などはこのロングテールという考え方がマッチします。どちらも一般大衆向けではなくニッチではありますが、確かな需要があります。また市場からの注目度が低いので競合も少なく、継続的な需要もあります。
つまりロングテールは一つひとつの売上規模は小さいものの、合計すると大きな売上につながるという考え方なのです。
ロングテールという名前は「グラフ」を由来としています。図のように縦軸を販売数、横軸を商品と置いた時、左から販売数の多い商品を並べると、ヒット商品とその他の商品のグラフがしっぽのように長く続いているためロングテールといわれています。
参考:
weblio辞書 IT用語辞典 - ロングテール
ロングテールが普及した背景
ロングテールが普及したのには、以下のような2つの理由が挙げられます。
ネット販売の普及
ロングテールはインターネット通販が普及したことにより注目されるようになりました。なぜかというと、
売り場面積に対する考え方が変わってきたからです。
今までのリアル店舗では商品数が多くなると、それだけ商品を置く場所が必要になり、商品数に比例して売り場面積を広くし、コストも多くかかっていました。したがって限られた売り場の中によく売れる商品を多く置くほうが売上向上につながったのです。
しかし、ネット通販では商品ページが売り場になるため、無制限に売り場を広げることができ、コストもかかりません。そのためニッチ商品の取り扱いもできるようになり、ネット上で検索されるようになったのです。
パレートの法則を覆した
ロングテールは、「パレートの法則」を覆す事象として注目されるようになりました。パレートの法則とはニハチ(2対8)の法則とも呼ばれており、社会において全体の2割程度の高額所得者が全体の8割の所得を占めているという考え方を示します。これはビジネスにも当てはめられ、商品の売上に関しては、2割のヒット商品が全体の8割の売上を占めていると考えられていました。
しかし、ロングテールでは「2割のヒット商品の売上よりも8割のニッチ商品の売上総額が上回る」ということが3D Robotics社のCEOで、米国の技術雑誌『WIRED』も元編集長でもあるクリスアンダーソンによって提唱され、パレートの法則を覆すと注目されました。
参考:
パレートの法則とロングテールの法則|リアルとWebの成功効率化
ロングテール戦略のメリット
ロングテール戦略には以下のようなメリットがあり、ネット販売という業態にマッチします。
1.ヒット商品だけでなく、多くの商品を同時に販売できる
あまり売れていない商品でも、商品ページさえ作れば顧客が買ってくれる可能性があります。後ほど紹介するAmazonの例でもあるように、商品ページを用意しておけば、顧客が検索した時に表示される機会が生まれます。店舗コストが低いWebの世界だからこそ可能な方法です。
もちろん、商品ページさえ作れば十分な収益を得られるわけではなく、Web上でも集客は必要です。以下の記事では大まかなWeb集客の方法と考え方を理解できます。集客を増やしたい方はぜひご参考ください。
参考:
ECマーケティングで押さえるべき商品訴求のコツと集客方法9選
2:収益が安定する
これまでの実店舗のように2割のヒット商品の売上に頼るのではなく、複数の商品で売上げを作っているので、たとえ1商品の売上げが落ちたとしても、全体に大きな影響は与えることは少なくなります。そのため、ニッチ商品を含め、商品点数を多くをそろえることで収益の安定化が見込めます。
ロングテール戦略のデメリット
ロングテールには以上のようなメリットがありますが、残念ながらデメリットも存在します。
戦略として採用すべきか、自社のご状況と合わせてご検討ください。
1.ホームページは作って終わりじゃない。常に運用と改善が必要
インターネット通販であるがゆえに、物理的な売り場に対するコストはかかりませんが、ホームページに対しては手を抜かずに運用する必要がります。ホームページはWebにおける店舗そのものです。集客人数や訪問ユーザーの行動を追うなど、サイト分析と改善が欠かせません。
自社にホームページを運用できる人がいれば、その人に商品ページ作成などを任せられるでしょう。しかし、そうした人がいなければ人を雇うか外注する必要があります。それに見合う売り上げが見込めるかも含めて検討するべきです。
最近ではホームページを簡単・無料で作成できるツールやサービスも増えています。以下記事もぜひご参考ください。
参考:
無料で使える!ホームページ作成ツール23選
参考:
【初心者必見!】ホームページ公開の流れと公開前に準備しておきたいこと
2.短期的な売上が小さい
商品ページを作ったからといってすぐに売れるとは限りません。加えてニッチな商品であるため年に数回しか購入されないものも多いでしょう。したがって商品を置いてすぐに売上が急増するということはありません。
ロングテールは中長期的な戦略でこそ真価を発揮します。それでも今すぐ売り上げを上げたいならば、まずは下記記事を参考にして、できる施策から試してください。
参考:
一刻も早くWeb集客で効果を出したいなら!知っておくべき手段とその選び方
ロングテール戦略の3つの成功事例
こちらではロングテール戦略を活用して成功を収めた3つの事例をご紹介します。
【事例1】Amazon:売り上げランキング40,000位以下の商品群で全体の売上の8割を占める!
Amazon | 本, ファッション, 家電から食品まで | アマゾン
Amazonは1年に数回売れるかもわからないニッチな商品であっても、品数を豊富に取りそろえたことで最終的にヒット商品以上に売上を出しました。実際に、Amazonの売上のほとんどは販売部数ランキング40,000位~2,300,000位の商品で支えられています。
インターネットで買い物をする人は特定のものを探し求め検索を行います。ニッチな商品も検索されるようになりました。そのためAmazonのように商品ページが多いほど、多くの顧客にアクセスしてもらいやすくなったのです。
【事例2】iTunes Store:大手歌手から無名の歌手の楽曲までをネット販売サービス。開始1週間で100万曲ダウンロード越え!
ミュージック iTunes でダウンロード
一部のマニアに人気がある国外の歌手の楽曲は、そもそも国内入荷数が少なく入手が困難でした。アップルが運営している音楽配信サービス「iTunes Store」で販売されるようになったことで、まだ有名でない歌手の楽曲でも、国内外に関係なく多くの人々に届けられるようになったのです。
一部のマニアに人気がある国外の歌手の楽曲は、そもそも国内入荷数が少なく入手することが困難です。iTunes Storeを利用すれば、どこでも手軽に購入できるようになりました。iTunes Storeはニッチな楽曲でも多くの種類を売ることで、大きな売上を生み出すようになったのです。
【事例3】Lulu.com:誰もが出版できる新しいモデルを作り出し、伝統的な出版モデルを覆し売上増加!
Online Self Publishing Book & eBook Company - Lulu
Lulu.comは数冊しか売れないアマチュア作品をたくさん販売することにより、ロングテール戦略に成功しました。
従来の一般的な出版会社のモデルは何度も選考を重ね、売り上げになる著者の作品だけを市場に出していました。しかし、Lulu.comは、対照的にインターネットを活用し、ネット上で作品制作から出版までできるサービスを始めました。これによりアマチュアでも作品を出すことが容易な販売モデルを確立しました。
Lulu.comが確立したモデルにより、これまでは目立たなかった若者著者も作品を出せるようになりました。また本人も読者側となるためサービスユーザーが増加しました。あらかじめ大量の冊数を印刷するのではなく、注文が入ってから印刷することでロスをなくしました。
人気になる著書の作品しか売上にできなかった従来のパターンから、数冊しか売れないアマチュア作品を多数販売するというロングテール戦略が成功した1つの事例と言えるでしょう。
ロングテール戦略の実行の仕方
ロングテール戦略の概要や有効性を事例等を交えてご説明してきました。
この記事を通して、戦略の採用を前向きに検討しているご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは、実際にロングテールを戦略として採用するための流れをご説明します。
1.長期的計画を立てる
事例でも見てきたように、ただ売れていない商品を増やすのではなく、マーケットは小さくとも継続して購入してくれるコアなユーザーがいるような商品を選択する必要があります。
ロングテール戦略をとれば、ネット通販会社すべてが成功する訳ではありません。長期的に計画を立てる必要があります。どういった商品を増やせば良いか、商品数を増やす際にかかるコストはどれほどかかるのか検討した上で始めましょう。
2.市場の見方を変えてターゲットを決める
成功事例であげたアップルであれば、「単体では大きな売り上げにつながらないが、一部のマニアには人気がある国外の歌手のCD」という商品に目をつけました。見方を変えれば、ファンにとっては「国内入荷数が少なく入手が困難」という問題を解決し、売り上げにつなげたのです。
このように、ニッチ商品を起点にしてニッチ市場のニーズはなにかを考えると、どの商品を売りに出すべきかのヒントになります。
3.ページ作りに力を入れる
商品ページはただ増やすだけでなく、購入者が検索した際に上位に表示されやすいようにコンテンツを工夫する必要があります。顧客が商品を検索している際に自社の商品ページができるだけ上位に表示される工夫が必要です。
これはSEOと呼ばれており、ページのさまざまなコンテンツで点数がつけられ、点数が高い順に上から表示されるようになっています。
参考:
SEO対策とは?誰でもできるSEOの基礎を学ぼう!|ferret webマーケティングに強くなるメディア
4.継続してページを増やす、改善する
ページを増やすことは、自社のサイトを見る入口を増やすことになります。入口を増やせば商品購入の機会も増えます。その機会を増やすために継続的にページを増やすことが重要です。
また、作った商品ページも見やすいページ構成にしたり、商品ページだけでなく実際に使ってみた感想を載せましょう。商品紹介の記事のようなページを設けたりする工夫をし、改善することが大切です。
5.長期的に繰り返す
ロングテール戦略は短期で結果がでる戦略ではありません。コツコツと長期的に努力を重ねることで結果が出てくるでしょう。
まとめ
今まで売れないとされていたニッチ商品も自社の売上を底上げする商品になる、それがロングテールです。「販売数が少ない商品=利益にならない」ではなく、「販売数が少なくても利益になるチャンス」という視点で戦略を考えてみてはいかがでしょうか。