「カスタマーエクスペリエンス」という言葉を耳にすることが多くなりましたが、いまいち意味が分からなかったり、マーケティングでどう活用すればよいのかも理解できていない、なんて悩んでいませんか?
今回はそんな方に、カスタマーエクスペリエンスの意味とサイトでの活用成功事例3選をご紹介します。
カスタマーエクスペリエンスのコンセプトと活用事例を3分で分かりやすく読めるようにまとめましたので、この内容を自社サービスの売上改善にご活用いただければと思います。
カスタマーエクスペリエンスとは?
カスタマー・エクスペリエンスは「顧客経験価値」のことで、製品やサービス自体の金銭的・物質的な価値ではなく、それを使用した際の満足感や効果などの心理的・感覚的な価値のことを指しています。
顧客はただ商品を購入するだけではなく、新しい商品を知る経験や、安く買う経験など、商品を購入する際に体験するさまざまな経験を価値としています。
カスタマー・エクスペリエンスは、以下の5つに分類することができます。
1. 知覚的経験価値
店舗のBGM、香り、デザイン、商品陳列など、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感から顧客に訴えかけます。2. 感覚的経験価値
丁寧なサービスや話し方で顧客の感情に対して訴えかけて信頼を得ます。3. 創造的経験価値
商品・サービスのコンセプトや企業の理念などを顧客に伝えることで、知性や好奇心に対して訴えかけます。4. 行動的経験価値
食生活、通勤・通学などの日常生活においての時間利用方法など新しいライフスタイルの提案によって、行動・身体に訴えかけます。5. 準拠集団
エコ、ボランティア活動、ブランドを身に着ける喜びなど、集団・グループへの帰属意識に訴えかけます。
なぜカスタマーエクスペリエンスに
注目すべきなのか
18カ国で行われたカスタマーエクスペリエンスに関するグローバル調査では、調査対象者の1,300名以上の企業経営幹部から、下記のような回答がありました。
カスタマー・エクスペリエンス未整備による平均的損失は年間売上の20%
同調査によると、回答した管理職の97%が、優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供することは事業にとって効果的に働き、またビジネス拡大に向けて重要であると認識している。積極的で一貫性のある、ブランド関連のカスタマー・エクスペリエンスを提供しないことで生じる平均的な損失は年間売上の20%に上る可能性があると予測している。
約9割の顧客がカスタマー・エクスペリエンスの質の低さによりブランド乗り換え
ところで、回答した管理職の49%が不十分なカスタマー・エクスペリエンスによって顧客がブランドを乗り換えると答えたのに対し、実際にカスタマー・エクスペリエンスの質の低さが理由でブランドを乗り換えた顧客は89%に上ってることが明らかになった。経営幹部はカスタマー・エクスペリエンスが、顧客の行動に与える影響を過小評価していると言える。
企業によるカスタマー・エクスペリエンスへの投資
企業はカスタマー・エクスペリエンス関連技術への投資を今後2年間で平均18%増加させるという結果がでた。クロスチャネルにおける顧客経験の改善や顧客分析が最優先事項であった。
このように、多数の企業でカスタマー・エクスペリエンスの重要性が認識されつつも、向上への取り組みはまだ不十分のようです。
顧客に高い経験価値を提供して満足してもらい、自社を末永く利用してもらうためには、どのような施策が効果的なのでしょうか?
下記では、サイト上で実際にカスタマー・エクスペリエンスを向上させた成功事例を3つ紹介します。
サイトでのカスタマー・エクスペリエンス向上の
成功事例3選
事例1:スターバックスコーヒー
マーケティング施策の目的
スターバックスは、「人と人とのつながりを大切に」することをミッションとしており、顧客とのすべての接点を通して「スターバックス体験」と呼ばれる感動体験を提供することを目指しています。
そのため、ウェブ上での顧客との接点である自社のデジタルチャネルが、それぞれの特徴を生かしながら顧客との関係構築を行えるようなマーケティング施策を目的としました。
改善施策
「The Starbucks Digital Network」という、デジタルコンテンツの提供サービスを発表しました。(こちらは米国内のスターバックスで利用可能ですが、日本国内では提供されていません)
このサービスでは、6つのチャネル(News & Sports、Entertainment、Wellness、Business & Ca-reers、My Neighborhood、Starbucks)のカテゴリに関するコンテンツを配信しています。
こちらのランディングページでは、ソーシャルメディアのダッシュボードが実装されており、Foursquareへのチェックイン、Starbucks Cardへのログインが可能で、Facebook、Twitter、MyStarbucksIdea、YouTube等のソーシャルメディアも一本化されているため、統合的にデジタルコンテンツを提供できる仕組みとなっています。
また、ソーシャルメディアも、それぞれの特徴を活かして利用しています。
Facebookでは、ビデオ・ブログ・写真・イベント情報の共有を行い、ブランドについての理解を深める場としており、Twitterはリアルタイムのコミュニケーションに活用しています。
MyStarbucksIdea.comは、ユーザーが独自のアイデアを投稿したり、他の人のアイディアへのコメントや投票をすることができるサイトで、ユーザーにとっては自身がスターバックスの経営に関わっているように感じることができる場になっています。
スマホアプリのmyStarbucks iPhone Appでは、店舗検索や商品の詳細情報の確認だけでなく、builder機能を使用してユーザーが好きなドリンクを自由に組み立てることもできるようになっています。
結果
スターバックスは、多様なデジタルチャネルを駆使した施策により、リアルの店舗だけでなく、インターネット上でも独自の顧客経験の提供に成功しており、ブランドの人気を確立しています。
スターバックスコーヒーのFacebookファン数は20,420千人で、コーポレートブランドの中で、Facebook(ファン数37,077千人)、CoCa-Cola(ファン数30,140千人)に続いて3位という人気ぶりです。
また、Twitterのフォロワー数は1,374千人おり、コーポレートブランドの中では34位となっています。(2011年4月時点)
参照:デジタル戦略によって実現される、顧客経験価値の創造【1】事例(スターバックスコーヒー)から読み取る進化型エクスペリエンスデザインとは?
事例2:米国DirecTV(ディレクTV)
マーケティング施策の目的
ディレクTVは米国の衛星放送サービスです。この企業では、自社が持つ膨大なコンテンツの中から、顧客に気に入ったチャンネルを見つけてもらい、契約を促進させる必要がありました。
改善施策
ディレクTVでは、ユーザーの趣味趣向に沿ったコンテンツを提供する際に、キャンペーン情報も適切に届けられるような仕組みを取り入れました。
行動ターゲティングに近い手法で、より動的にリアルタイムの提案を行い、ユーザーがクーポン等のお得な情報を確実に取得できるようにして、スムーズに自身の嗜好とマッチしたコンテンツへと辿りつける仕組みとなっています。
実際のホームページ
たとえば、「特定のプロファイルを持った顧客があるページを訪れた際に、その顧客向けに期間限定セールのクーポンを特定の期間中に配信したい」というサイト側のプロモーション戦略があったとします。
そのセグメントの顧客がディレクTVのサイトを訪れたら、ページ内にクーポンが表示されます。そこまでは通常のレコメンデーションと同様です。しかし、顧客は必ずしもそのクーポン情報に気づくとは限らず、そのページから離れてしまう場合があります。
ディレクTVは、こうした顧客が再度ページを訪れた際には、同様のクーポンまたは別のクーポンを、さらに大きく表示することで、顧客にとってお得な情報を気づきやすいような環境を提供しているのです。
引用:Eコマースサイトでロイヤル顧客を増やすためのインタラクティブなカスタマー・エクスペリエンス
結果
上記の施策により、ユーザーがお得な情報に気付きやすくなったことで、顧客満足度の向上へとつなげています。
ディレクTVは、このようなプロモーションを複数実行したことで、以前と比べて20%以上も売上を伸ばすことに成功しました。
事例3:米国Chico’s
マーケティング施策の目的
Chico’sは女性用アパレルのECサイトです。こちらの企業では、それぞれの顧客の属性や趣味嗜好に合ったプロモーションを実施するために、マーケティング施策を見直すことを目的としました。
改善施策
よりよい顧客経験を提供するために、プロモーション実行に必要なルールを設定し、自社サイトを訪れたユーザーとのコミュニケーションが双方向から図れるライブチャットを組み込みました。(チャット画面は、上記画像を参照)
実際の店舗であれば、販売員に自身に似合う服の組み合わせやサイズなどを相談できますが、ネットでの買い物の際は、サイト上の情報のみを基に判断しなければなりません。また、口コミサイトなどの他サイトの情報を参考にするユーザーもいるため、ビジネスチャンスを逃す可能性がありました。
それに対処するために、Chico’sのサイトでは、商品ページ等にユーザーが一定時間以上滞在した場合、スタイリストと呼ばれるスタッフに直接相談できるライブチャットを自動で立ち上げる仕組みを取り入れました。
結果
ウェブ上での顧客とのやりとりを可能にしたことで、実際の店舗で受けるサービスの水準に近い顧客経験を提供することに成功しています。
それにより、商品の購買率の向上と、顧客ロイヤリティの獲得につながっています。
参照:Eコマースサイトでロイヤル顧客を増やすためのインタラクティブなカスタマー・エクスペリエンス
結論
カスタマーエクスペリエンスの意味とサイトでの活用成功事例3選はいかがでしたでしょうか?
顧客により高い経験価値を与えられるように、今回の事例を自社商品やサービスのマーケティングに活かしてみてください。